大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)1999号 判決

控訴人が訴外大島卯一に対する和解調書の執行力ある正本に基いて、昭和三一年一月二五日本件有体動産に対して強制執行をなしたこと、及び被控訴人が右物件は自己の所有であると主張して本件異議の訴を提起し、原審裁判所が被控訴人の右主張を容れて仮執行宣言附の被控訴人勝訴の判決をした結果、右仮執行宣言に基いて係争物件に対する前記執行が解除となつたことは、何れも当事者間に争がない。

被控訴人は、本件強制執行が右の如く解除となつた以上、控訴人は控訴をなす利益を失うに至つたものであると主張するけれども、およそ第三者が強制執行の目的物について所有権を主張してその執行の排除を求めるいわゆる第三者異議の訴は、執行の目的物に対する所有権の帰属を確定し、将来においても右物件に対する差押を禁止しようとするものにほかならないのであるから、その判決未確定の間に執行の解除があつても、裁判所としてはなお異議の当否について審理を遂げ判決をなすべきものであると解するのが相当である。もし、執行の解除によつて異議訴訟が終了するものとするならば、更に執行が繰り返されるに至る虞があり、しかも異議の訴はついにその本来の目的を達することができないであろう。被控訴人が現に本訴を維持している以上、控訴人としてもその異議の当否につき審理判決を求める利益を有するものといわなければならないから、被控訴人の前記主張はこれを採用することができない。

よつて本件異議の当否について考えるのに、被控訴人は、本件執行にかかる物件はすべて被控訴人の所有に属するものであり、夫々被控訴人の実父大島卯一或いは妹から贈与を受けたものであると供述しているが、証拠を綜合すれば、控訴人から訴外大島卯一に対する執行債権は、約束手形二通の手形債権であり、控訴人は最初右手形債権について支払命令を申請し、昭和二九年九月七日頃卯一の異議によつて訴訟に移行したところ、昭和三〇年三月一四日裁判上の和解をなしたものであること、そこで控訴人は右和解調書に基き昭和三〇年一二月三〇日執行吏に委任して卯一に対する執行をなさしめたのであるが、その際卯一は同執行吏に対し、作成日附が昭和二〇年一月一日で、昭和三〇年二月五日宇都宮地方法務局栃木支局で認証した確定日附のある。卯一から被控訴人に対する贈与証書を示し、差押えされようとした物件がもはや卯一の所有に属するものでなく、被控訴人の所有であると告げたため、同執行吏は差押を実行しなかつたが、控訴人は更に昭和三一年一月二五日他の執行吏に委任して卯一に対する執行をなさしめたところ、控訴人は前回同様前記贈与証書を示して執行を拒んだが、右執行吏はこれを認めず執行をなしたこと、而して右贈与証書に記載されていた物件は被控訴人が父卯一から贈与を受けたと主張する本件差押物件と一致していたこと、大島卯一は昭和二〇年一月当時までは理髪店組合の支部長をしていたばかりでなく、同人は他にも債務を負担していたこと、等のことが認められるのであつて、これらの事実から考えれば、訴外大島卯一は執行を免れるために右贈与証書を作成したのではないかと推認されるのであつて、その他の証拠によつても本件差押物件が被控訴人の所有であることを認めるに足りない。

してみると、被控訴人の本訴請求は理由がないからこれを棄却すべきであるところ、これと趣旨を異にする原判決は失当で、本件控訴は理由があるとして、原判決を取り消し、宇都宮地裁栃木支部のなした強制執行停止決定もこれを取り消した。

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